「陽」
「んっ…んっ…」
「ふふふ、陽ちゃん」
ぽろりぽろりと泣いていたのがいつのまにか本格的な号泣になってしまい、袖で顔を覆う陽の髪に手のひらを沿わせる。
「陽は赤ちゃんのためにたくさん栄養蓄えてくれるんだもんね。だから好きなもの食べていいし、食べたいもの言っていいんだからね」
「……っ、ぅぅ…ひっ…」
深く息を吸うこともできずに詰まり、ただただ涙があふれてくる。
「なんでも買いに行くから言ってよ?……まぐろ釣ってきてとか言われちゃったら無理だけどさ」
「っ…ふふ…っ、そんなん……言わないよ」
「ふふ、言わないか」
少し腫れた目を袖で拭いながら、ようやく顔を上げてくれた。
「いちご…どうしたの?」
「奏太の奥さんが譲ってくれたんだよ、前々から取り寄せてたものだったみたいなんだけど」
「…そうなんだ、……だいじょうぶなの?」
「うん、昨日届いたんだって。間違えて二箱買ったからいいよって言ってくれたの」
「でも……貴重ないちごなんでしょ?」
「いちごのタルト作るのに2パックあれば十分だから、一箱持って行ってくれたら嬉しいって」
「…」
「奏太と愛香さんの優しさかもね」
「そう思う…」
「俺も何回も断ったし、何度も確認したんだけどね。本当にいいよって」
一箱に4パック。
それを二箱抱えた二人が、"多めに届いて困ってた" "ちょうどよかった"と笑い合って譲ってくれた。
いらないと首を振る二人を押し切って、もちろん代金は支払った。
それでは満足できないくらい、二人には本当に感謝している。
「だからまだ3パック余ってるよ。今日の夜も、明日の朝も食べられる」
眉をきゅっと寄せた陽を、胸でぎゅうっと受け止めた。
*おわり*


