*港side*
翌朝。
ダイニングチェアに腰を下ろした陽が、自分でグラスに手を伸ばした。
ストローで水を吸い上げ、喉が動く。
昨日よりも力強く、その様子を見てやっとホッとすることができた。
「陽、体温測らせてね」
頷いたのを見てから襟元に手を入れ、体温計を滑り込ませる。
肩を抱いてから数秒後、ぴぴ、と電子音が鳴った。
液晶の数字は──37.5。
下がった…微熱だ。
絶対に油断はできないけれど、徐々に回復し始めているのをこの目で強く感じている。
ベッドを降りることだってできたのだ。
「微熱だ、少し下がったね」
「昨日よりは…だいぶいい」
「そっか。病院の薬はよく効くから」
膨らんだお腹から足にかけてが包めるように、大きめのひざ掛けを掛けた。
柔らかい布地を撫でるように整えたあと、少し湿気を帯びた髪の毛を指先でまとめ、ゴムでふわりと結いた。
「朝ごはん用意するね」
「……まだ食べられるかわからない」
不安がにじんだ声だった。
「うん、わかってるよ。食べられるものだけでいいから」
キッチンの棚から小さなザルを取り出し、そこに赤い実を広げた。
流れる水の下でひとつずつ丁寧に実を洗う。
肌にあたる水の温度が適温かどうかをたしかめながら、傷つけないよう丁寧に。
すべて洗い終えたあと小さいナイフでヘタを取り除き、キッチンペーパーの上に並べて水気を拭き取った。
この実が甘いことを知らせるような、強い香りがする。
それらをガラスの器に乗せると、艷やかな赤い実が映えた。
「お待たせ」
少しドキドキしたような表情をしていた陽が、わかりやすく目を見開いた。


