小皿の上には、食べきれなかったスイカのかけらがいくつか残っていた。
ベッドサイドの上を片付けながら、港が残りの果物を口に運ぶ。
その口元を見つめながら、言葉が少しずつ膨らんでいくのを感じていた。
ずっと言いたかったけれど、まとまらなかったこと。
今なら言える、伝わる気がする。
「港、あのね…」
別のフォークでスイカを口に含んだ港が、微かに首を傾げた。
「ん?もっといる?」
「ううん…」
「どうしたの、疲れた?」
「あのね…」
もぐもぐと口を動かた港が喉を動かしたあと、食器をベッドサイドに置いた。
「うん」
「港が帰ってきて、"いちご買えなかった"って言ったとき、ちょっと泣きそうな顔しちゃったでしょ…」
「あぁ、うん」
「それね、いちごがなかったのが嫌だったんじゃないの…」
「そうなの?」
「私がなんにも考えずにいちご食べたいって言ったせいで、港がすごく申し訳無さそうな顔してたから」
「そんな顔してた?」
「うん…だからね、港にそんな顔させちゃったのが嫌で泣きそうになった」
「はは、そうだったの。いいんだよ、食べたいものなんて遠慮しなくて」
「うん…でも、探しに行ってくれたんでしょ?」
「いちご、もう時期終わっちゃってさ。でも、陽にどうしても食べさせてあげたかったから」
「ありがとう…ごめんね?」
目を合わせることが照れくさくて、俯いたままその言葉を紡いだ。
素直な気持ちと、少しだけ残っていた後ろめたさ。
「おいしかった?」
髪を撫でた港が優しく笑いかけたので、首が取れるんじゃないかと思うほど頷いた。
「本当においしかった」
「その言葉が聞けただけで十分」
「じゃ、はい」
コロン、と手のひらに薬が乗せられた。
「水分も取れたし、安心だな」


