冷房の低い音が響く寝室。
ぬるくなった額のタオルを替えたあと、その頬に手の甲を当てる。
「ただいま…陽。遅くなってごめん」
「…帰ってきたの?」
「うん」
熱のせいか、寝起きのせいか…
夢の中にいるようなぼんやりとした表情だ。
「いちご……あった?」
「ごめん。どこにもなかった」
瞼を閉じた陽がゆっくりと頷き、唇をぎゅっと結んでいる。
「でも、代わりに桃、買ってきた。煮てやわらかくしたら食べられる?」
ほんのり赤く色づいた身を手のひらに乗せると、陽がほんのわずかに目を見開いた。
「もも…?」
「うん。ちょっとだけ食べてみる?」
「うん…」
急いで小鍋に湯を沸かし、皮を向いた桃をスライスして軽く煮ていく。
レモン水の代わりに蜂蜜を加え、とろりとした果肉ができあがった。


