商店街の一角にあるその果物店には、宝石のようなフルーツが美しく並べられていた。
木箱に収められた高級メロンやマンゴー、布地に包まれたさくらんぼのギフトセットもある。
足早に店内の奥まで視線を走らせるが、いちごの姿は…ない。
店主らしき年配の女性が、店の表にスイカを並べていた。
「すみません、いちごってもうないですよね」
「いちご?もう終わっちゃったねぇ、6月入ってすぐまではあったんだけどね」
「そうですよね」
「向こうのスーパーは行ったんか?」
背後にいた年配の男性が店の外に出る。
「あそこ、ありそうだけどなぁ」
「ないわよ、うちのほうが長く置いてるから」
どうやらこちらも店主のようだ。
「そうかぁ。いちごはね、もうどこも終わってるかもしれないな」
「そうですよね。すみません、ありがとうございます」
頭を下げて店を出る。
こればかりは仕方がない。
季節の果物には終わりがある。
なのに、まだ諦めきれない自分がいる。
目の奥に浮かぶ、あの表情が忘れられなくて。
冷たい水も通らなかった陽が、唯一「食べたい」と言ったあのときの表情が。


