エアコンの風が静かに回り、じっとりと不快な熱気がいつのまにか消えていた。
額にタオルを置き、首筋に手のひらを当てる。
「いちご…」
新しいパジャマのボタンを掛けていたら、ポツリと陽が呟いた。
「…いちご?」
「いちご…食べたい。」
熱に浮かされたような声だったが、それでも目元はほんの少しだけ真剣だった。
自分から「食べたい」と言ったのは初めてだ。
ここ数日、なにも受け付けなかったのに。
「いちご食べられる?」
「食べられる…」
「わかった、買ってくる」
「ごめん…」
「一人で待てる?」
静かに頷いた陽が、目を閉じる。
もう限界だと、瞼が教えているようだった。
ボタンを掛け終わった手で髪を撫でる。
「待っててね」


