お水を飲んで一息ついたあと、すでにドライヤーの音が聞こえる洗面所を覗く。
「あ、おいで〜」
先に自分の髪を乾かしていた港が手を止め、用意されていた椅子を引いた。
「どーぞこちらに」
「なんか、美容室みたい…」
「ふふ、いいでしょ」
「乾かしてからでいいよ?自分の髪…」
「陽が冷えたら困るから先」
鏡越しに、まだ濡れた髪が見える。
「化粧水ここにあるからね」
私が毎晩使っているスキンケアが洗面台の端っこに置かれていた。
ドライヤーの最中に同時進行できるよう、用意してくれていたらしい。
目が合うとにこりと微笑んだ港が、ドライヤーのスイッチを入れた。
まとめていた髪がほどかれたあと、軽やかな風の音が響く。
まだ湯気を含んで湿った髪が、手ぐしで丁寧にほぐされていった。
その様子を鏡で確認しながら、化粧水を手のひらに広げて顔全体を包み込む。
お風呂上がりで少し張っていた肌が水分を吸収し、しっとり、もっちりと感触を変えた。
「港……用意してくれてありがとう」
「うん」
「髪も、洗ってくれてありがとう……」
「全然いいよ、毎日でもやる」
「腰悪くなっちゃうよ?私はそれが心配なの…」
「腰強いから安心して」
「腰強いってなに…」
髪の根元に優しく温風が当たり、そのたびにふわりと甘い香りが立ち上がった。
しっとりとしていた質感が、ふわりと軽やかに変わっていく。


