*季蛍side*
勤務を終えて帰宅すると、タイミングを見計らったかのように夕食が準備されていた。
「オムライス作ったの!?」
今朝も沈み込むように眠っていたので、とても料理ができる体調であったようには思えない。
「無理しなくてよかったのに」
「無理じゃないよ、平熱」
「ほんと?」
「本当」
「わたしがチェックする」
「どーぞ」
無抵抗で佇む蒼の額に手のひらを当てるが、たしかにちっとも熱くない。
「ありがとね、出勤代わってくれて」
「ううん…それはいいんだけど」
「おかげさまで完全に回復しました」
「なにも症状ない?」
「ない」
「それならいいけど…」
「ありがと」
頭を撫でられたあと、少しの間目が離せなくなって。
「ふふ…」
「わかりやす」
「だって…、なんで見てくるの…」
「季蛍が見てくるから」
「…」
「食べよ、たぶん美味しい」
ケチャップで描かれたハートマークに、思わず笑みが溢れる。
「ふふ、うれしい。いただきます」
*おわり*


