＊陽side＊
脱衣所で手早く服を脱いだ港がすぐに浴室に戻り、シャワーを浴び始めた。
私の様子を時折伺いながら、手際よく髪を洗い、体を洗い…
そんな様子を浴槽の中から眺めていると、髪をかき上げた港が首を傾げた。
「ん？」
「ううん…見てるだけ」
「なにそれ」
「なんかすごく幸せな気分」
「俺も」
シャワーの音が止み、頬に手の甲が当てられた。
「大丈夫？」
「うん…もう少し入っていたいけど」
「のぼせる前に出よう」
「…うん」
「ちょっと待ってて、声掛けたら出てきてね」
「わかった…」
先に浴室から出た港が手際よく服を着たあと、浴槽の前で手を差し出した。
「おいで」
その手はいつも頼もしくて、私の不安を帳消しにしてくれる。
優しくて信頼できる、頼もしい港の手。
脱衣所の空気が肌に触れたとき、肩にバスタオルが掛けられた。
「いかに早く服を着るかが勝負だからな」
「ふふ…さっきの港にはかなわない」
「早かったでしょ、俺」
「早すぎだよ」
そうは言いつつ優しい手つきで丁寧に体を拭いてくれる港に、私は自然と身を任せていた。
乾いたバスローブに袖を通し、リビングのソファに腰を下ろす。
「はい、お水」
「ありがとう」
「さっぱりした？」
「もう、最高の気分」
「それはよかった〜」
「ごめんね？港がゆっくり入れなくて…」
「ううん、俺いつもあんなだし」
さすがにあのスピード感で出てくることはそうないのに、そう言ってくれるんだ。
「陽、少し落ち着いたら洗面所においで」
「うん…ドライヤーしてくれるの？」
「そこまでがお風呂だもんな」
「ふふ…」
