トリートメントをなじませて数分置く間、ボディーソープを泡立てて背中に落としていく。
何回も入浴を手伝ううちに手の届かない場所は俺が洗うのが恒例になり、そのたびにくすぐったいと笑いながら身を捩らせるのが笑えた。
「そんなにくすぐったくないでしょ」
「くすぐったい」
「ほら、流すよ」
髪の毛、背中、胸回り、腕、足の先…
陽が自分で泡を乗せたところも残りがないようによく流し、最後に指通りのよくなった髪の毛の水気を切って軽くゴムでまとめておく。
「湯船、入っていいよ」
静かに立ち上がった陽に手を貸し、浴槽の縁をまたぐ様子を見届ける。
沈むように腰を下ろすと、小さく息を吐いた。
「あったかい…」
「湯加減どう?」
「ちょうどいい、熱すぎない」
「そう、よかった」
湯船の外にしゃがみ込み、浴槽の縁に肘を乗せる。
頬はほんのりと赤く、それでいて表情がやわらかい。
朝から体調はあまり良くなさそうだったが、やっと少し楽になれたのが伝わってくる。
こんな時間も子どもが生まれたら形を変えるだろう。
生まれてくる小さな命が暮らしの中心になり、二人だけの静かな時間は少し遠くなるかもしれない。
それでも、今よりももっと愛おしい時間がやってくることを、二人で待ち遠しく思っている。
「…どうしたの?」
「ううん、なんでもない。気持ちよさそうだなって思って」
「うん、気持ちいい…眠くなってくる」
「陽がのぼせる前にシャワー浴びちゃうわ」
「ゆっくりでいいよ?私ちゃんと温まりたいの…」
「まあ、5分くらいかな」
「えー、短いよ」
「短くないよ」


