脱衣所に滑り止めのマットを敷き、床が濡れていないか入念に確認する。
タオルを用意して振り向くと、陽がキャミソールに手をかけた。
「服脱いだ……」
少し照れたような声でぽつりと呟く。
「ん、おいで」
袖をまくり、ズボンを軽くたくし上げて浴室のドアを開ける。
ふわりとした湯気が足元を優しく包んだ。
「港は?」
「陽が湯船に浸かってる間にシャワー浴びるよ」
「そっか…」
どこか安心したように頷いた陽が、お腹をかばいながら椅子に腰を下ろした。
「おっけー?」
「うん、大丈夫」
毎度恒例の湯加減チェックから始まり、少しぬるめのお湯ではじめに背中を流す。
「温度変えてほしかったら言って」
「うん」
毛先からシャワーを当て、顔に水が流れないように丁寧に濡らしていく。
陽の髪を洗うのは何度目か…
ここまで来ると手慣れたもんだ。
泡立てたシャンプーを全体に馴染ませる。
「一人で入るときもちゃんとマット敷いてる?」
「敷いてるよ、転んじゃいそうなんだもん」
「怖すぎる」
「でも大丈夫…すごい気をつけてる」
「俺がいない日は待っててよ、帰るまで」
「やだよー」
「遅いもんな」
「ううん、そうじゃない…罪悪感あるから」
「なんの?」
「毎日洗ってもらう罪悪感…」
「俺、やりたくてやってるからね」
「…それは、嬉しいけど」
「もし何かあったら一生後悔する」
「…」
「陽が嫌じゃないなら任せて」
「…うん、ありがとう」
生え際まで泡残りがないようにシャワーを当て、十分にすすいでいく。
「流し足りないところございませんかー?」
「ふふ、ないです」


