*陽side*
薬局を出たあと、車の助手席に乗り込んだ。
手元の包みが自分の体に効いてくれるものだという実感がまだ湧かないけれど、何かあったらこれがある、と思うだけで気持ちがとても楽になった。
「終わったね、お疲れさま」
運転席に乗り込んだ港が私の髪を撫でたあと、シートベルトを締める。
「ありがとう……」
病院の先生が話を聞いてくれた。
水分は取れている、と話したら、「上出来ですね」と微笑んでくれた。
「病院に来て正解です。小さいことでも不安があったら相談に来てください」
先生が私と港を交互に見ながらそう言ってくれたので、来てよかったと思った。
私のつわりはとてもとても重いものではない。
昨日の夜はあんなだったが、調子の良い日は水も飲めるし好んだものなら食べられる。
だから余計に病院へのハードルが高かった。
私には必要ないと、耐える範囲内だと思ったからだ。
心が折れそうになったけれど、話をしたらスッキリした。
薬はまだ飲んでいないのに、体が少し軽い気がする。
気持ちが少し、明るい気がする。
だるさは残っているけれど、昨日の自分よりはいい。
ずっとずっと、いい。
「帰ろうか〜」
港が弱めに暖房を入れてくれた。
「…ね、港?」
「ん?」
「帰りにね、うどんが食べたいなって思ったの…」
「…え?」
ハンドルを握りかけていた港が手を止め、目を丸くする。
「…なんて言った?いま」
「なんか、冷たいうどんが食べたくなって…」
言わなくていいや、と思っていたことだった。
食べたいと言ったら港が作ってくれるだろう。
だけど今、この帰りに、二人でお店に寄りたくなった。
しばらくしていない、二人での外食を。
「ごめん…ワガママで…」
「いや、ううん、行こう、もちろん」
早口で返事をした港が車を出す。
「え…いいの?」
「行こう、めっちゃ行こう」
「ふふ…めっちゃ行くのは無理だって」


