*港side*
「お疲れ」
玄関先に顔を出した蒼が、心なしか安心したように笑った。
「いま季蛍が陽さん呼びに行ってる」
「ごめん、予定より遅くなって」
「無事に上がれてよかったね」
「本当に帰らせてもらえるのかって、ちょっとヒヤヒヤしたけど。迷惑掛けてごめん」
「ううん。少し眠れたみたいだよ、水分も取ってるから安心して」
「本当にありがとう…頭が上がらない」
「何言ってんの、お互い様でしょ」
「これ、季蛍さんと食べて」
クリーム色の紙袋を差し出す。
「なに、これ」
「マフィン」
「受け取れないよ、何もしてないのに」
「いや、本当に。ここがなかったら陽をひとりにするしかなかったから」
「…」
「今後も迷惑掛けることがあるかもしれない」
「うん。いつでも来て。ありがとう、季蛍が絶対に喜ぶ」
紙袋を受け取った蒼が、後ろを振り返った。


