「ハーブティーです」
「いい香り、ありがとう…」
ソファに座らせてもらった。
目の前のテーブルに花柄模様のカップが置かれる。
「よかったらどうぞ」
穏やかな口調で笑いかけた蒼くんが、隣にひざ掛けを置いてくれた。
過剰に心配の言葉を言われるわけでもなく、ただ、静かにやさしい視線をくれる。
それがとても、居心地がよかった。
「ん…おいしい。」
無意識に言葉が出た。
「本当?よかったです」
同じカップを口に運んだ季蛍ちゃんが、ふわっと笑う。
「体調が優れないときによく飲むんです、これ。ちょっと気持ちがホッとします」
「うん…とてもおいしいです」
「匂いは…どうですか?大丈夫…」
「むしろないと嫌なくらい、好きな香り」
「わぁ、よかったです」
「私、珍しくご飯の匂いは大丈夫で。自分は食べなくても、港が食事する目の前にいつも座ってて…」
ほわん、と港の顔を思い出していた。
「食べられない?」
心配そうにそう聞いて、頷くと「わかった」と言って。
「私も少し食べられそう」
体調が良いそんな日は、とても安心したように笑っていて。
今日も街が寝静まっているうんと夜遅くから、ずっと私の隣にいてくれた。
自分に余裕がなくてお礼を言えなかったけれど、ずっと、ずっとそばにいてくれた。
涙を拭ってくれて、「つらいよな」って頭も背中も撫でてくれて…
ひとりじゃ越せるはずのない夜を、港がいたから乗り切った。
「陽さん、大丈夫ですか?」
「あ、うん…ふふ、大丈夫」
会いたい。


