*陽side*
「大丈夫ですよ、もらいます」
ほとんど水分…いや、胃液のようなものしか出なかった。
「これ使ってくださいね」
優しく笑いかけた季蛍ちゃんが温かいおしぼりをそばに置き、洗面器を手に部屋を出ていく。
申し訳なくて…恥ずかしくて。
それでも、一度戻したらスッキリして、少し眠れたせいか瞼の重みも消えていた。
おしぼりで口周りを拭き、静かに横になる。
「…あ。」
部屋の隅で、アロマディフューザーが小さく灯っていた。
あれだったんだ。
こんなにも気持ちを穏やかにしてくれたのは。
時計を見ると、正午前。
迎えが近いことに気が付き、胸の中がほわっとした。
顔を見たい。
港の…やさしい顔を。


