*季蛍side*
「眠れますか?吐き気…あります?」
「少し落ち着いて…大丈夫みたい」
「よかったです、横になるのがつらくなければいいんですけど」
明かりが少し入る程度にレースのカーテンを閉めた。
「ここのお部屋、使って大丈夫…?」
「はい、もちろん。来客用っていうより、私のお昼寝部屋みたいな」
そう言うと陽さんが少し笑って、布団の中に横たわる。
「気温は大丈夫ですか?」
「大丈夫…ありがとう」
「寒ければ言ってくださいね。リビングにいるので遠慮なく呼んでください」
ひとりで眠るほうが落ち着くだろう、と思っていたが、何かを言いたげな表情に見えた。
「いていいですか?」
「ふふ…いいですか?」
「もちろん。久しぶりに陽さんに会えて嬉しいです」
「わたしも、ずっと季蛍ちゃんに会いたくて…」
「本当ですか?嬉しい」
「話したいことたくさんあって、でも…体がこんなんで」
笑ったけれど、辛そうだった。
無理をしたように見えた。
「気持ち悪いだけじゃなくて、体、しんどいですよね。思うように動けなくて…余計自分が嫌になるっていうか」
「うん…そう。寝るか吐くか泣くことしかできないの。自分の体じゃないみたい」
「わかります」
「自分が嫌になることって…あった?」
「ありすぎます、両手じゃ足りないくらい!」
「そっか…そうだよね」
「泣きながらコンビニの前に立ってたこともありました、今思うとよくわからない…」
「ふふふ、そんなことが」
「蒼が夜勤でいなかったんですよね。でも自分が食べたいものが家になくて…気がついたらコンビニの前に立ってて」
「そうなんだ…」
「ひどい格好でしたけど、いっぱいいっぱいで考える余裕もなかったなって」
「……うん。そうなんだよね」
「私に港くんほどの安心感はないと思うんです、でも、なんでも言ってほしい」
「…」
「第二の家だと思ってください」
「……ありがとう」
充血した目がだんだんと重たくなる。
閉じては開き、を繰り返していた瞼が、持ち上がらなくなった。
少しして寝息を確認し、物音を立てないようにそっと部屋を出た。


