*港side*
光の気配に、目を覚ました。
何度か瞬きを繰り返すうちに、寝室のドアの隙間から光が流れ込んでいることを認識する。
枕元の時計はまだ午前3時を指していた。
隣のベッドに陽の姿がない。代わりに小さな水音と、かすかな嗚咽が聞こえた。
何かが起こるリスクはある…いつだって。
リビングを見て回り、見当たらないことを確認して洗面所へ。
「あ、いた…」
トイレの中に蹲る陽の姿を見つけた。
慌てて中に入ったのだろう。
扉も開けたままだった。
「大丈夫、陽」
宙を彷徨う手のひらがトイレの手すりを掴み、首を縦に動かす。
「吐いた?」
「んーん…なんにも出ない」
「そっか」
「起こしてごめんね…」
「いいから、そんなの」
パジャマの袖口が濡れていた。
トイレと洗面所を行き来し、何度も口をゆすいだのだろう。


