*陽side*
港にオムライスを大絶賛され、満更でもなさそうな母がキッチンから現れた。
「ごちそうさまでした、本当に美味しかった」
「噓でも嬉しいわ」
「お世辞抜きです」
「本当に優しいよね、港くんは」
「お母さん喜びすぎ」
「二人に褒められて嬉しいの」
確かに美味しい、そこに噓はない。
港が母を褒めてくれると、私まで嬉しいのだ。
「お父さんったら好きだからって先に手つけちゃったのよ」
カステラが数切れすでになくなっていた。
モグモグと頬張る父が、手に持っているカステラの端っこを嬉しそうに掲げる。
こう見えても父はいわゆる上層部で働いていて、常に冷静で頼れる姿が社内では当たり前なのだろう。
たくさんの責任を背負っていながらも、家ではマイペースで和やかな雰囲気を保っている父を、私はとても尊敬している。
「大人気ないからやめてよ、お父さん」
呆れたように顔を歪めた母が、箱の中のカステラを小皿の上に並べた。
「港が買ってきてくれたの?」
「うん、行きに買えなかったから」
「いいのに…ありがとう」
「陽も好きでしょ?」
「大好き」


