*港side*
予定より少し遅くなった。
インターホンを鳴らすと、エプロン姿の陽母がニコニコと顔を覗かせる。
「おかえりなさい」
「遅くなりました、すみません」
紙袋を差し出すと、両手をブンブンと横に振りながら後ろに下がってしまう。
「もう、いいのに!」
「本当は行きに持って行こうと思ってて」
「お礼をしたいのは私たちなの」
「いや、本当に。日頃のお礼です」
「もう…」
「お義父さん好きですよね?カステラ」
「大 好 き」
「あはは、よかった」
「ありがとう、お言葉に甘えていただきます。上がって?」
「すみません、お邪魔します」
紙袋を抱えたお義母さんが一直線にリビングへ。
その直後喜ぶ声が聞こえたので、思わず笑いが込み上げた。
パタパタと足音が近づいてくる。
「悪いね、いただいちゃって」
ペコペコと頭を下げたお義父さんがカステラの紙袋を掲げ、嬉しそうに笑った。
「いつもお世話になってます」
「こっちは何もしてないのにね」
「はは、そんなに好きでした?」
「大好きなんだよ、ここのカステラ」
「良かった」
「ありがとう、みんなで食べましょう」
再びペコペコと頭を下げながら、キッチンへ消えていく。
いろんなスイーツと迷ったが、カステラを選んで正解だった。
「港くん、晩ご飯まだでしょう?」
「まだなんですよ」
「食べていく?オムライスしかないけど」
「いいですか?」
「もちろん、いま用意するから」
「ありがとうございます、何から何まで」
「余計なお世話だったらごめんなさいね、私たち港くんのファンだから」
「はは、ファンって」
「ほんとよ、ねえ?」
陽気な陽母には会うだけで元気をもらえるよ、本当に。
変に気を使わないこの空間、自分の実家と同じくらい居心地が良い。
穏やかな陽の雰囲気はこのご両親から受け継がれているのだな、と毎度思う。
「陽どうでした?今日」
「食欲はとてもある、オムライスも全部食べたの。ただ…」


