「待ってたよ」
玄関先で迎えてくれた母が、私を両腕で抱きしめた。
「んふふ、久しぶり」
「あら、港くん」
続いて玄関に入った港が荷物を置き、母ににっこりと笑ったあと頭を下げる。
「ご無沙汰しています」
「元気だった?会えて嬉しい」
「元気です、お変わりないですか?」
「ないない、健康だけが自慢なのよ」
「それは何よりです」
「これからお仕事なんでしょう?」
「はい、今夜中には帰ります」
母と港のやり取りを隣で聞いていたら、軽く背中が撫でられた。
「行ってくるね」
「あ、うん…気をつけてね?」
母に会釈しながら玄関を出ていく背中が名残惜しく、追いかけそうになるけれど。
ここは私が我慢しなければいけない…
「港くんは相変わらず優しいわね」
「うん…お仕事忙しいのに」
「夜は張り切ってご飯用意するから安心して」
「ふふ…ありがとう」


