*陽side*
「陽、ついたよ」
肩を揺すられて目を開けたら、ひどく懐かしい実家のお庭が見えた。
「ありがとう、送ってくれて」
「うん、まだ降りないでね。支えるから」
お腹がだいぶ大きくなり、車を降りるのもやっとなのだ。
後部座席に回ってくれた港がドアを開け、差し出された手を握る。
「気をつけてよ」
「ありがとう、大丈夫」
のそのそと降りたのにも関わらずバランスを崩し、受け止めてくれた港に甘えて体重を掛けてしまった。
「っと…危ない危ない」
「ごめん、重かったでしょ」
「ううん、愛おしい重さだった」
「ふふ、なにそれ」
荷物を両手に抱えた港がドアを閉める。
「私も持つ」
「大丈夫、その代わり転ばないでよ」
「わかってるよう…」
「体調は?朝と同じ?」
「うん…でも本当に平気だから」
一昨日から体調が優れず、7度台の熱が上がったり下がったり。
微熱なのでそこまで具合は悪くないのだが、少し歩くだけで息が上がる。
自分の食事も用意できず、港が仕事でいない今日は実家で過ごすことになった。
遠かったのに送ってくれたのだ。
港はこれから仕事なのに。


