「陽ー?」
キッチンで食器を片していたら、風呂場のドアが開く音が聞こえた。
名前を呼ぶが返事がない。
小走りで風呂場へ行くと、脱衣所で服を脱いでいるところだった。
「な、なに…」
「入るの?お風呂」
「うん…汗かいちゃって」
「髪洗おうか?」
「ううん、大丈夫」
グーサインを示して笑う陽だが、風呂場で転倒したのはつい昨日のことなのだ。
不安は拭えない。
「本当に大丈夫だから」
と言い残してドアが閉まる。
「ほんとかよ…」
バスタオルをドアの前に置き、足拭きマットを敷く。
よし、これで多少は安心だ。
と、洗面所を出るところで、風呂場から何かを落とす大きな音が響く。
すかさずドアを叩くと、苦笑した陽が顔を出した。
「ふふ…ちょっと滑っちゃった」
床にシャンプーのボトルが転がっている。
「…。今日は俺が洗う」
「大丈夫…見て、拾えるし」
お腹を抱えるようにして手を伸ばすのだが、あと数センチというところでボトルに指が届かない。
「…。なんか、腕が短くなったかも」
「ふっ…お腹が大きくなったんでしょ」
「えへへ…」
「やるから座って」
「…じゃ、お願いします」
「よろこんで」


