「ねえ、パパ」
季蛍が夏来と手を繋ぎ、少し前を歩いていた。
それを見計らったかのように愛優が歩く速度を落とし、隣に付く。
「ん?」
「私が夏来見てるから…」
「…え?」
「二人でクレープ買いに行くから、ママ連れてって…」
不安げな顔が訴えた。
愛優の言っている意味がわかった。
「うん、本当に厳しかったら声掛けるから大丈夫」
「ううん…少しでも我慢してほしくない」
「…」
「私わかるから」
背後から見ていてもわかるほど肩で深く息をしている。
本当は少し前から異変に気がついていたが、声を掛けるタイミングはなかったのだ。
「夏来のことは大丈夫、私がちゃんと見る」
「…わかった、ありがとう」
「夏来、一緒にクレープ買いに行こ?」
そう言って季蛍と繋いでいた手と反対の手を握り、顔を覗き込んで声を掛ける。
「行く!」
後ろから季蛍の背中を叩くと、繋いでいた手を離した。
「トイレ行こ」
「…」
「愛優が見ててくれるって」
「一人で行ける」
「…じゃ、お店の前にいるから」
頷いた季蛍が踵を返し、トイレへ向かうのを見届ける。
途中から肩が大きく動き、あれでも我慢していたのだと察した。
「なんで戻ってきたの!?」
「一人でいいって」
「ダメ!着いてって」
後ろを歩いていたのに気がついた愛優に背中を押され、遠くの方へ見える季蛍の背中を追う。


