夏来が前から見たいと言っていた映画を見た。
子ども向けにも関わらずストーリー性にあふれ、ほろりと涙をこぼしたのがバレて 蒼に笑われた。
自分だってグッときたくせに。
大きなポップコーンに喜び、すごく面白かった!と余韻に浸る夏来がすごく大きく見えた。
知らぬ間にも心はゆっくり成長していて、こうした経験で私たちにそれを教えてくれる。
「お姉ちゃんも泣いた?」
「泣いちゃったよ、感動したんだもん」
子ども向けでも付き合ってくれる愛優には頭が上がらない。
嫌な顔せず「楽しかった」と笑い、夏来と感想を共有し合っている。
「お昼ご飯なに食べたい?」
蒼が問うと、二人は顔を見合わせた。
「おすし!お姉ちゃんは?」
「お寿司いいね」
「ほんと?!」
「しばらく食べてないもんね」
嬉しそうに体を揺らした夏来が、フロアマップに掲載された飲食店の写真を見に行った。
「愛優、ほんとは何がいいの?」
蒼の問いに少し悩んだ素振りを見せた愛優が、首を横に振った。
「本当に何でもいい」
「本当に?」
「うん、本当に…」
「夏来の意見を尊重してくれるんでしょ?」
「ふふ…そんなことない」
「たまには言って」
「…二人は?」
「私たちはいいの。愛優が食べたいものを聞きたいんだもん」
「…強いて言うならパスタ。でも、お寿司久しぶりだからうれしい」
「気分は洋食?」
「ううん…そんなことない」
「…よし、任せて」
「え?」


