「どうしても」のおねだりに、今だけは勝てなくて。
小さいカップに入ったバニラアイスを口に運ぶ度、桃色の頬が膨らむ。
「かたい」
まだ溶けない部分をスプーンでつつきながら、そう呟くのが聞こえる。
赤信号で停車するたびに隣の様子を確認しているが、カップの中身は未だに残っていた。
「美味しい?」
「うん…」
「頑張ったご褒美ね」
「うん…」
「…どうかした?」
返事のトーンが少し下がった。
たったそれだけだったが、違和感があった。
「…あのね」
再び赤信号に差し掛かる。
助手席に目を移すと、少し前まで固まっていたアイスクリームが溶け始めていた。
体温で溶け出したようだ。
「あのね…、食べたら寝てもいい?」
「……。いいよ」
そんなことかと安心しつつ様子を見ると、既に瞼は限界のようだった。
「食べきれないなら蓋しておいて」
それには瞬時に首を左右に振り、「大丈夫」だと拒んだ。
くっついてしまいそうな瞼を懸命に持ち上げる度、顔色が悪く感じられる。


