「まだ微熱なんだよね。でも辛いと思うの」
眉を下げた季蛍が、ケーキの箱を手にキッチンへ消えていく。
ソファに横たわる小さな体の正面に回ると、重たい瞼は開いていた。
「夏来」
数回瞬きを繰り返したあと、視線が合う。
「パ…」
微かに口が開いたが、それ以上言葉を発することはなかった。
「しんどいね。可哀想にな…」
若干薄赤く染まる頬に手の甲を当て、首元へ。
「ご飯食べられそう?」
「…。」
「夏来の好きなスープを作ってるみたいだよ」
首は数回左右に動いた。
時間とともに体温が上がっているのだろう。
だいぶ辛そうだ。
「ちょっと待ってて」
コクン、と頷いたのを確認し、髪を撫でる。
触れた額は、じんわりと熱い体温を伝えた。


