*蒼side*
やけに寒くて、目が覚めた。
掛け布団の上に毛布までかけていたのに、体の内側からじわじわと湧いてくるような嫌な寒気が止まらない。
手足の末端がこわばり、ひとつ息を吸うだけで肺の奥が冷えていくような感覚に、思わず体を小さく丸める。
枕元のスマートフォンを手に取ると、時刻は6時。
あと少しで目覚ましが鳴る時間だ。
どうせ起きるなら…と、ゆっくり体を起こす。
けれど上体を起こした瞬間、ぞくりとした寒気が背筋を走る。芯から冷える寒さだった。
「……おかしいな」
寝ぼけた頭でぼそりとつぶやきながら、ベッドを降りた。
洗面所で最低限の支度を済ませ、リビングに向かう。
キッチンのほうから立ち上る湯気とだしの香りが、ふわりと鼻をくすぐった。
朝食担当の季蛍が、小鍋の前でおたまを握っていた。
「あ!」
少し目を見開き、まっすぐにこちらを見つめる。
「風邪引いたの?」
「……自覚はない」
言葉ではそう返したが、喉の奥がほんのりと熱を帯びている。
首筋には重さがあり、体の動きがどこか鈍い。
「絶対熱ある、そういう顔だもん」
「…顔?」
「いつもより目が赤いよ?あと、ほっぺたの色」
じりじりと鋭い視線で観察されながら、体温計を手にソファへと腰を下ろす。
「……まあ、微熱ってところかな」
額に手を当てながら、無意識にそうつぶやいた。


