「お疲れさま。よく頑張ったね、津田さん」

「ありがとうございます。篠原くんも、お疲れさまでした」

 今日も篠原くんとの勉強会は無事に終わった。最近少しずつでも集中力がついてきたのか、夕方の鐘がなるまで飽きずに勉強できている。篠原くんが教えてくれた、パスタみたいな名前のテクニックで勉強したのがいいみたい。25分間集中して、5分間休憩するのを繰り返していると、以外にも時間はあっという間に経ってしまった。

「今日の宿題は、一緒に勉強したところの見直しね。問題はスプレッドシートで上げておくから、今日の12時までには提出する事」

「わ、わかりました……」

 今日も宿題かぁ。ゲームやってる時間なさそうだなぁ。

 篠原くんが来る前までは、毎日10時間以上は漫画読んだりゲームしたりして過ごしていたのに、今では勉強の時間の方が多くなっている。不登校になって勉強をさぼっていたから、授業の遅れを取り戻すために仕方ないとは思うけど、もともと勉強嫌いだった身からすると、宿題を出されるのは負担だった。

「津田さんならできる程度の範囲だと思うから、ちゃんとやっておいてね」

「……あのー」

「ん?」

「その……勉強のことなんですけど……」

「ん、勉強がどうしたの?」

「たまには、やすみ……たいな……て……」

 い、言っちゃった。ついに言っちゃったよ。どうしよう。教えてもらっている分際でなに我儘なこと言ってんだと思われただろうか。
 篠原くんの顔、怖くて見れない。ど、どうしよう。がっかりされるよね。やっぱり、ダメな奴なんだって呆れられるかも。

「いいよ」

「えっ」

 い、いいの? え、本当に?

 びっくりして篠原くんの顔を見ると、にっこりと笑っている。そこには、軽蔑とか、がっかりしたようすは見られない。

「うん。いいよ」

「あ――!」

 ありがとうございます! と、言いかけた時だった。

「でも、一つだけお願いを聞いてくれる?」

「おね、がい?」

 にっこり笑ったままの顔を見て、なんだかすごく嫌な予感がした。

「うん。お願い。学校のテストを受けてくれないかな」

 学校の……テスト!?

「えっ、な、なんで、ですか……?」

「先生に頼んで、津田さんだけ特別に日程を作ってもらったんだ。家で受けられるように出来たら一番良かったんだけど、不正防止のために学校で受けてほしいって」

 何、その話。わたし、全く聞いてないよ!?

「えっ……でも、1年生の勉強しかしてないです……」

「それは大丈夫。ちゃんと、1年生のテストを受けさせてもらえるように話してあるから」

「……へ……へ?」

「先生に頼んで、津田さんだけ特別に日程を作ってもったんだ。家で受けられるように出来たら一番良かったんだけど、不正防止のために学校で受けてほしいって」

 なんで、そんな話が知らない間に進んでいるんだろう。学校へ行きたいかどうかも聞かれてないのに。

「……がっこうには、いきたく、ない、です」

 動揺して、声が震えた。