「当然だろ。こいつらがおかしいんだって」

 咲乃は再び彼らの頭上から写しているワークブックを覗き込んだ。

「でもこれ、結構間違えてるよ。このワークブックの持ち主と全く同じ間違い方をしていたら、先生に怪しまれるんじゃないかな?」

 咲乃が課題の間違いを指摘すると、村上たちは口々に悪態をついた。

「何なら、俺のを見る?」

 咲乃が提案に、村上たちが驚いて咲乃を見上げる。

「良いのか?」

 咲乃は自分のワークブックを、彼らに差し出した。

「そのまま写していいよ。先生に聞かれても、俺がみんなとやりましたって言えば納得すると思うから」

「篠原サンキュ! まじで助かったわ!」

 咲乃は西田のワークブックを持って、西田の方へ向かった。咲乃がまっすぐ自分の方へ来ることに気付いて、西田は身体をこわばらせる。また何かされると思ったのだろう。ワークブックを出した咲乃に、西田は息を詰めて上半身をのけ反らせた。

 西田の前で、咲乃が課題のページを開いて見せる。咲乃は間違えている箇所を指で指し示した。

「ここ。あと、こことここも。もう少し時間があるから解き直してみて。ヒントは教科書に書かれているから、よく読めばわかると思う」

 西田は呆けたようにぽかんと口を開けて、咲乃からワークブックを受け取った。

「どうしてもわからなかったら、後で聞いてくれれば教えてあげる」

「え、あ……、ど、どうも……」

 面食らったように目を瞬かせて、西田は咲乃に小さな声で礼を言った。