派手好きで高慢な悪役令嬢に転生しましたが、バッドエンドは嫌なので地味に謙虚に生きていきたい。

「……キャロム、こんな所で何をしているのかしら?」
「……え?」

 私が声をかけると、キャロムは顔を上げて驚いたような表情をした。恐らく、見つからないと思っていたのだろう。
 私が見つけられたくらいなのだから、ここは別に誰からでも見える位置であるはずだ。それなのに、こういう反応をしているということは、本人はそれに気づいていないということだろう。
 今まで声をかけられなかったのは、単純に見ないふりをしていただけだろうか。それとも、本当に偶然誰にも見つかっていなかったのだろうか。
 どちらにしても、このままここでうずくまっているのはよくない。それは、彼にとってかなり嫌なことであるはずだ。

「廊下から、あなたの姿が見えたのよ。その位置だと、ぎりぎり見えるみたいね」
「なっ……!」

 私の言葉に、キャロムは後ろを向いた。その後、少し恥ずかしそうに顔を赤らめる。
 やはり、彼は誰にも見つからないと思っていたようだ。それが間違いだと気づいた今の彼の心情は、かなり苦しいものだろう。こちらからすると、少しおかしいというか、微笑ましいことではあるのだが。