派手好きで高慢な悪役令嬢に転生しましたが、バッドエンドは嫌なので地味に謙虚に生きていきたい。

 結局、キャロムは授業に戻ってこなかった。彼にとって、あの敗北はそれ程に屈辱的なものだったようだ。
 授業を途中で抜けるのは、明らかによくないことである。だが、戻ることができないという彼の気持ちはわからない訳ではない。あんな出来事があった後に、戻って来るなんて、誰だって無理な話だ。

「あっ……」
「アルフィアさん、どうかしたのですか?」

 昼休み、私はメルティナとともに食堂に向かっていた。その道中、私は窓の外にとある人物を発見する。
 それは、キャロムだ。彼は、校舎裏の隅で膝に顔を埋めるような形で、三角座りしている。位置関係的に、私からはそれがぎりぎり見えてしまったのだ。

「どうやら、キャロムはまだ立ち直れていないみたいね……」
「そうみたいですね……」

 キャロムは、まだ落ち込んでいるようだった。あの様子からして、例え午後の授業が始まっても、教室には戻らなさそうである。このまま、放課後になっても丸くなっていそうなくらいだ。
 というか、実際に彼は戻らなかったはずである。確か、彼が教室に帰ってきたのは、一日経ってからだったはずだ。