派手好きで高慢な悪役令嬢に転生しましたが、バッドエンドは嫌なので地味に謙虚に生きていきたい。

 『Magical stories』のゲーム中、初めて選択肢が出るのがこの場面である。キャロムを追いかけるかどうか、それがその内容だ。
 私は、彼を追いかけないことを選んだ。この状況で追いかけても、キャロムを追い詰めるだけのような気がしたからだ。
 ただ、恐らく、彼のルートに入るためには、ここで追いかけなければならなかったのだろう。そのキャラに直接かかわる選択肢なのだから、それは間違いない。

「あなたは、どうしたいと思っているの?」
「……正直言って、彼になんと声をかけていいのかわかりません。私が行っても、追い打ちになるだけのような……そんな気がするんです」
「そうね……確かに、そうなってしまうかもしれないわ」

 メルティナは、私と概ね同じ感想を抱いていた。彼女にとっても、今のキャロムに声をかけることは、とても難しいことであるようだ。
 そこで、私はとあることを思った。もしかしたら、時が巻き戻る前、彼女は私がゲームでした選択と同じような行動をしてきたのではないかと。
 彼女がバルクド様と結ばれたというなら、彼とのエンディングを迎えた私と同じ選択をしていたとしてもおかしくはないはずだ。もしそうなら、私達が知っている情報は、割と似通っているのかもしれない。

「中々、難しいものね……」
「ええ、そうですね……」

 結局、私達はキャロムを追いかけることはできなかった。例え二回目でも、私達は彼にかける言葉を見つけるものはできなかったのだ。