派手好きで高慢な悪役令嬢に転生しましたが、バッドエンドは嫌なので地味に謙虚に生きていきたい。

「な、なんで……」
「……」

 二人は、天才と称される者達である。しかし、そんな天才の中でも、二人には差があったのだ。
 キャロムは、百年に一度の天才だった。彼に秀でた才能があることは間違いない。
 だが、メルティナは千年に一度の天才だったのである。彼が劣っている訳ではなく、彼女が凄すぎるのだ。

「くそう!」

 キャロムは、メルティナの前から逃げ出した。いや、より正確にいえば、この場から逃げ出したのだろう。
 彼にとって、この敗北は屈辱的だった。だから、この場にいたくなくなったのだろう。
 試合の最中逃げ出した場合、その人物は敗北する。よって、この試合はメルティナの勝ちだ。
 しかし、彼女はまったく喜んでいない。それは、当然だろう。彼女にとって、この勝利はまったく意味がないものなのだから。

「……虚しい勝利でした」
「そうよね……」

 こちらに帰ってきたメルティナは、少し悲しそうにそう呟いた。やはり、彼女は私が思っていた通りの感想しか抱いていないようである。

「彼を追いかけるべきなのでしょうか?」
「それは……難しい質問ね」
「そうですよね……」

 メルティナは、キャロムをこのまま放っておいていいのかについて、悩んでいた。これも、ゲームと同じだ。