派手好きで高慢な悪役令嬢に転生しましたが、バッドエンドは嫌なので地味に謙虚に生きていきたい。

「まだまだ!」

 キャロムは、どんどんと魔弾を作り出した。そして、それをメルティナに向けて撃っていく。
 だが、それでもメルティナは動かない。それを見て、私はあることを理解した。
 恐らく、彼女はこの試合で攻撃しないつもりだ。キャロムの魔力が切れるのを待つつもりなのだ。
 それは、ゲーム、いや彼女にとっては過去のことが関係しているのだろう。彼女は、ゲームでは反撃をした。その結果、あることが起こってしまったのだ。

「まだ動かないのか!」

 魔力の障壁があっても試合では怪我をすることはある。障壁を破って、そのまま魔法が当たることがあるのだ。
 前にキャロムと試合した際、メルティナの魔法は彼の障壁を打ち破り、そのままその体に当たってしまった。それで、キャロムは怪我を負ったのだ。
 それは、軽度の怪我だった。掠り傷と言える程のものだった。だが、それでも、メルティナにとっては避けたいことなのだろう。

「はあ、はあ……」
「……」
「そ、そんな……」

 いくつもの魔弾を放った後、キャロムは息を切らしていた。それに対して、メルティナはまったく平静を保っている。
 そこには、歴然の差があった。この時点で、試合は決しているといえるだろう。