派手好きで高慢な悪役令嬢に転生しましたが、バッドエンドは嫌なので地味に謙虚に生きていきたい。

「……まあ、兄上も言っていたしな。この三年間を無駄にしないために、しっかりと勉学に励む。それはきっと、大切なことなんだろうな……」
「えっと……そう、ですね」

 ドルキンスは、基本的に明るい人物である。それが、私がゲームをしていて彼に覚えた印象だ。
 彼は、基本的には明るい。つまり、例外的にすごく暗くなる時がある。
 それは、兄のことを話す時だ。ドルキンスは、ディゾール様に対してコンプレックスを覚えているようなのだ。

「だが、俺はどちらかというと、キャロム君の言葉の方に賛成しているんだ。才能がない凡人が努力しても、無駄なんじゃないかとな……」
「ドルキンス様……」
「……おっと、すまなかったな。変なことを聞かせてしまった。どうか、忘れてくれ」
「あ、はい……」

 ドルキンスは、私に対して明るい笑顔を向けてきた。それが心からの笑顔でないことは、明らかである。
 そんな彼に対して、何を言えばいいのか。それが私にはわからなかった。
 私は、ふとメルティナの方に視線を向ける。彼女は、次の授業の教科書を読んでいた。
 ゲームの主人公である彼女ならば、ここでドルキンスに対して何かいい言葉をかけてあげられたのだろうか。