派手好きで高慢な悪役令嬢に転生しましたが、バッドエンドは嫌なので地味に謙虚に生きていきたい。

 メルティナは、バルクド様を時が巻き戻る前と同一人物であるとは認識しつつも、それに納得することができていないようだ。
 確かに、それは難しい所だろう。バルクド様は今、記憶喪失のような状態だ。
 いや、それよりももっと複雑かもしれない。彼は記憶をなくして、その記憶を上書きするように人生を歩んでいる。それが、メルティナの彼に対する思いを疑う要因となっているのだろう。

「という訳で、私も今はそういうことにはあまり向き合えていないというのが現状です」
「そっか……」
「あり得るかはわかりませんが、バルクド様が何かを思い出してくれれば、私の考えも変わるのかもしれません。でも、それまでは……」
「うん、それは仕方ないことだよ」

 私は、メルティナの言葉に頷いた。
 時が巻き戻ったことによって、色々なことが変わってしまった。その影響で、彼女の思いが変わることも仕方ないことだろう。
 結局の所、この三人の関係は、分解されたような状態といった所だろうか。変にこじれていないのは良かったことだが、素直に喜べる状態ではないので、私も結構複雑である。