派手好きで高慢な悪役令嬢に転生しましたが、バッドエンドは嫌なので地味に謙虚に生きていきたい。

 隣の席の人間に話しかける。それは、別におかしいことではない。そういうことをする人は、少なくはないだろう。
 しかし、私が知っているメルティナは、そんなことをする性格ではなかった。元人見知りをするような大人しい性格だったはずだ。
 いや、そもそも、平民から貴族に話しかけるということは、とても珍しい。自分より地位が高い人間に、このように話しかけるなんて中々ないことだろう。

「そういうあなたは、メルティナ・ソンブレイでいいのかしら?」
「ええ、そうです」

 私の質問に、メルティナは堂々と答えてきた。その態度も、少し妙だ。大人しい彼女にしては、堂々とし過ぎている気がする。
 ただ、私は彼女らしくないとは思わなかった。むしろ、この堂々とした態度が、彼女らしいとさえ思えたのだ。
 それは、彼女のその堂々さに見覚えがあったからである。ゲームの終盤、成長した彼女が見せる態度に、今の彼女の態度は似ているのだ。

「あの……私は、平民です。だから、こんなことを言うのは、あなたに対して失礼なのかもしれません。ですが、隣の席になった方に何も言わないというのも変な話だと思うので、言わせてもらいます。これから、どうかよろしくお願いします」
「……ええ、こちらこそ、よろしくお願いさせてもらうわ」