派手好きで高慢な悪役令嬢に転生しましたが、バッドエンドは嫌なので地味に謙虚に生きていきたい。

「それで、まあ、私の方はそんな所かしら。後は、メルティナのことね」
「メルティナのこと?」

 アルフィアの言葉に、私はメルティナの方を見てみた。すると、彼女は少し気まずそうな顔をしている。

「えっと……時が巻き戻る前、メルティナはバルクド様と結ばれたんだよね?」
「……ええ、そうです」

 私の指摘に、メルティナは少し照れていた。
 彼女の事情は、少し複雑である。時が巻き戻る前にバルクド様と結ばれた。だが、今回は特にそういうことにはなっていない。
 メルティナだけが覚えている状態。それが今なのだ。彼女にとって、それはかなり苦しいことだろう。

「その、今でも、バルクド様のことは……」
「そうですね……それは少し、難しい問題なんです」
「難しい問題?」
「ええ……」

 私が恐る恐る聞いてみると、メルティナはまた複雑な表情をした。
 彼女にとってこのことは、かなり悩ましいことのようだ。その表情だけで、それが伺える。

「私は、確かにバルクド様とそういう関係になりました。でも、それを彼は覚えていない。私達がどんな風に出会って、どんな風に結ばれたか、それを彼は何も覚えていないのです」
「……そうなんだよね」
「それどころか、彼は違う時間を歩んでいます。違う人生を歩んでいます。そんな彼に対して、私はどうすればいいのかわからないのです。紛れもなく彼であるというのに、私は中々そう思うことができないのです」