派手好きで高慢な悪役令嬢に転生しましたが、バッドエンドは嫌なので地味に謙虚に生きていきたい。

 ファルーシャは、声を震わせていた。聞くだけでも恐ろしい話だが、実際に見たことがある彼女は、もっと恐ろしいのだろう。
 魂を傷つけたり分割したりする。それによって、どんな影響があるのかはわからない。
 ただ、確実にいいことでないことはわかる。シャザームは、残酷な人間だ。私は、改めてそれを実感する。

「ただ、彼女にとって予想外だったのは、アルフィア様が健在だったことです。まさか別の世界から魂が入っていたとは、彼女も思っていなかったようです」
「まあ、それはそうよね……私自身だって、わかっていなかったんだもの」

 流石の暗黒の魔女も、私の存在までは理解できていなかったようだ。
 それは、そうだろう。私の存在は、例外中の例外だ。恐らく、予想できた人なんて、誰一人いないはずである。

「あなたの存在には、焦っていましたが、暗黒の魔女は特に何もしようとはしませんでした。魂を奪っても戻ったあなたの魂を奪っても、無駄だと思っていたようです。別に自分の邪魔をしようとしている訳でもないので、放っておいてもいい。彼女はそう判断したのです」
「なるほど……」

 シャザームにとって、私の存在は理解できないものだった。慎重な彼女は、そんな私に触れるのは得策ではないと思ったようだ。
 そのおかげで、私は助かった。そう思うと、結構危なかったのだと実感する。一歩間違えていれば、私も魂を抜かれていたかもしれないのだ。