派手好きで高慢な悪役令嬢に転生しましたが、バッドエンドは嫌なので地味に謙虚に生きていきたい。

「実はな、俺には記憶があるんだ。姉貴と一緒に過ごした記憶が……信じられないかもしれないけど、俺は確かに十歳くらいになるまで姉貴と過ごしていた。まあ、それは夢なのかもしれないけど、なんとなく、俺はそれを過去の出来事のように思っているんだよ」
「なっ……」

 リオーブの言葉に、私は思わず唸っていた。それは、二つの事実に対する驚きから出てきたものだ。
 一つは、リオーブにもう一つの記憶があったこと。それは、メルティナが体験した時が巻き戻る前の記憶と考えることができるだろう。
 それは、驚くべきことである。しかし、そちらはまだいい。メルティナが覚えていたのだから、他に覚えている者がいてもそれはそこまでおかしいことではない。
 問題は、もう一つの方だ。そちら側は、とても重要なことである気がする。

「リオーブ様、あなたには十歳くらいまでお姉様と過ごした記憶があるのですね?」
「うん? ああ、そうだが……」
「でも、お姉様はあなたが物心つく頃には魂が抜けていた。それに、間違いはありませんか?」
「ああ、間違いはない」

 リオーブの姉は、二つの異なる人生を歩んでいる。一つは、十二歳くらいまで過ごした人生、もう一つは物心つく前に魂を失った人生。
 メルティナや私の例から考えると、その違いはとても大切なものであるように思える。誰かの介入があった。そのように考えられるのだ。
 この世界の歴史は、私やメルティナのような人間の介入がなければ変わらない。私達は、それを何度も体験してきた。だから、相違点があるなら、それは誰かの介入であるはずなのだ。