派手好きで高慢な悪役令嬢に転生しましたが、バッドエンドは嫌なので地味に謙虚に生きていきたい。

 私が予想していた通り、メルティナは事件の黒幕の存在について話しはじめた。
 時が巻き戻ったという話は、あまりに突拍子もないことであるため、人には話しにくいことである。
 だが、黒幕の存在がいるという話に関しては、別に人に話しても特に問題はない。恐らく、メルティナはそう思ったのだろう。

「しかし、黒幕の存在か……そんな人物がいるなら、まず間違いなく今回の事件に絡んでいると思うんだけど……」
「それを示すものは、何も出てきていません。だから、私も自分の推測に対して、少し自信が持てなくなっているのです」

 実際に事件に巻き込まれたこの二人に関しては、黒幕である可能性も薄いという考えも、メルティナの中にはあるかもしれない。
 もっとも、仮に相手が黒幕だったとしても、今回のように事実を伝えることに関してはそれ程問題があることではないだろう。
 メルティナは、レフェイラの取り巻きの令嬢達に黒幕の存在について聞いている。既に、この事実は多くの人々に伝わっているのだ。
 彼女達が黒幕について知らなかったとしても、黒幕は彼女達の動向をほぼ確実に窺っているだろう。最早、私達が黒幕について調べていることは、隠しようがないことであるはずだ。だから、それ程問題ないことだと思うのである。