運命の”アイ”ナンバー

初めて国立美術展に来た。

芸術には詳しい訳では無いけれど、教科書に載っていた物やどこぞやで得た知識がずらっと並んでいた。
それでも音楽の方が僕は好きだ。

聴いていて楽しいし言葉を使っているから表現が分かりやすい、それなら小説もそうなのでは?と思い数冊は読んでみたけれど今では読む機会が減った。

けれどやめた訳じゃない、だって趣味が音楽と読書って言えたらかっこいいから。
何でそんな事を考え始めたかと言うと、1時間ほど館内を二人で歩いていたとき橘さんが突然「深川君の将来の夢って何かあります?」と尋ねてきたからだ。

結論から言うと僕は小説家になりたかった。と話した。

「なんで過去形なんです?」

「言葉通りの意味だよ。諦めたんだ、別に漢字が難しかったからとかではないからね」

「違うのですか?」

思ってたのか。僕はそこまで馬鹿じゃない。

「才能が無いんだ、人の心を動かすくらいのね」

出口を通って秋になりかけの少し冷たい風を感じる、そろそろお腹がすくころ間だ。

どうしてこの美術展に連れてきてほしかったのかはオシャレなカフェでコーヒーとサンドイッチでも食べながら聞くとしよう。入場料は出してもらったのだからお昼ご飯ぐらいは奢らせてほしい、僕だって男なのだ。