運命の”アイ”ナンバー

なんかこの前より散らかっている気がするような、この空き教室。

僕ら以外の人も使ってるからなのだろう、それなら机の一つくらいあってもいいと思うのだけれど。
椅子の数も少ないし落ち着かない。並んでるデッサン用石膏像がこっち観てるような…

「お待たせしました!」

「うわ!!」

「深川君何してるんですか?」

いてて、久しぶりに椅子から落ちた。ノックぐらいしてくれ、一般的なマナーは知ってるだろお嬢様。

「何でもないよ。それでお呼び出しのご用件は?またどこかに連れて行ってとか?」

「いえ。それはまた今度改めてお願いします」

またお願いされるのね、うれしいようなめんどくさいような楽しみなような。

「とうとう高校生活最後の文化祭、そしてその実行委員に選ばれた私と深川君。まるで漫画みたいなイベント発生ですね」

全員めんどくだがって休んでた僕らに押し付けただけだと思うけど。実際に和樹も言っていたし僕だってやりたくないポジションなのに。何でこんな元気なんだ、この子こんなキャラだったっけ?今までのイメージ全然違う。

「と言う訳で放課後はこの空き教室で作成会議をしましょう」

「それって文化祭まで毎日ここに来ないといけないってこと?」

「勿論です!」

僕の無所属の特権が今日この目の前に居る橘さんに奪われてしまった。

「でもこの空き教室、他の人も使ってる痕跡あるけど大丈夫なの?」

「それはご心配なく。この空き教室、元は美術部の物置に使っていたんですけど去年先輩方が卒業して以来部員が私以外増えなかったんですよ。なので部員は私1人です。来年には廃部確定しているので好きに使っていいと顧問の佐々木先生から許可は得ています」

この汚さは橘さんが生み出した芸術作品という事か。
常人には分からない価値のある絵画が展示されているように僕には到底た
どり着くことが出来ない何かがあるってことか。

少なくとも足の踏み場は無いのは確かだ。

「僕、人前に出るの苦手なんだけど」

「安心してください。私もです」

不安があった。