運命の”アイ”ナンバー

本当にお金持ちだったんだな、橘さんって。

庭付きのある家なんて見るの初めてだったな、ラニアも可愛かった。ポラニアにその名前はどうかとは思う。
住所聞いたら僕の家と近いから送ったけど、僕も近くを寄ったら撫でさせて貰うことにしよう。

帰る理由は無いけど特に行きたい場所もないしな。
なら何処へ行くか、それはこのバイトに任せた。ガス欠になり掛けたら帰ろ、それまでは橘さんの将来の夢でも考えと事に。

「…特別ねー…」

女優とか?総理大臣?まさか世界征服か?

特別って職業も作れば良いのに、アイナンバー制度ってふざけたもの作れるんだったらさ。

少なくとも桜は僕の中では特別な存在だったのに、それもこれも全部アイナンバーのせいで。

ピィッピィーーーー!!!
うわっ!

「ばかやろ!!死にてーのか!!」

「すみません!」

「…ッったく」

死にたい、か。そうかもしれないな。
こんな世界生きてる価値なんて無いのかもな、それこそ時間の無駄なのかもしれない。

なら、何で生きてんだ?決まってる。死にたくない、死ぬのが怖いから。
僕は、僕らは”死”と言う見えない物が知らない事が怖くて怖くて仕方がない弱い生き物だから、だから一生懸命群れながら生き延びようとしてる。

だから桜の方が僕より強かったんだ。