純色ロマンティック

廊下ですれ違う友達たちと少し話したり、ふざけ合ったりしながら、学校を出て加藤とコンビニまでの道を歩く。


もちろん、柏木さんを気にすることも怠らない。



「(ちゃんとついてきてるかな……?)」



本当は後ろを振り向きたい。

柏木さんが困ったことになっていないか、心配だ。


だってさ。

もしもだよ?


昨日の雨のせいでできた水たまりが、柏木さんのすらっとのびた足を水の世界に引き込もうとしていたら……


人家から垂れ下がった柳の枝が、柏木さんの美しさに懸想して巻き付こうとしていたら……


空を飛び交う燕が、柏木さんを可愛らしい親指姫と勘違いして連れ去ろうとしたら……


どうするんだよ!!



「(ああ、心配!柏木さんがちゃんと俺をストーキングできるか不安要素が多すぎる……!)」



今すぐ、その存在を確かめたい。

きっと少し離れているところから見ているだろう彼女を、ちらっとでいいから見たい。




けれど、加藤に気づかれるわけにはいかない。

こいつに知られたら、騒がれるに決まっている。


柏木さんが秘めながら一生懸命取り組んでいる俺へのストーカー行為を邪魔させてなるものか。


……それに。



「(あんな可愛さしかない素の柏木さん、誰にも見せたくない)」



俺だけが知っていればいい。