身動ぎできないまま、新庄くんを見上げた。



「(……心の中がとっても静かなの、なんでかな……)」



新庄くんに対するストーカー行為を見つかってしまったと、泣きたい気持ちになっていたのに。

間近にある新庄くんの瞳に見下ろされ、ドキドキと心臓がうるさくて仕方なかったのに。


時がとまってしまったみたいに、なにも音が聞こえなくなって……。

目の前にいる、新庄くんしかあたしの世界にはいない。



「……柏木さん」



あたしを呼ぶ声に、静かだった胸の中が色付く。


新庄くんはあたしをその瞳の中に受け止めて、丸ごと包み込むようにゆっくりと目を細めた。

その目元を隠す長い睫毛の影が、少し震えてる……?



「……めちゃくちゃ好き」



もう一度、新庄くんが蕩けるように囁く。

その言葉は、さっきよりも熱さがあった。なのに、優しく響いてあたしに沁みてくる。



「柏木さんのこと、安達先輩に……、いや、他のどんな男にも渡したくない」



とくん…、心臓が動き出す。

きゅぅ…、胸の奥が甘く鳴る。



「俺が、柏木さんのとなりにいたいんだ」



まっすぐにあたしを見て、真剣に伝えてくれるのがわかる。


でも、あたしに注がれる強い想いをのせた眼差しが、どこか気遣いを孕んでいて。

あたしの止まってしまった時を誘うかのように、あたたかい視線をくれる。


どこか見覚えのある……。


それは、ストーカー活動中、ひそかに何度も盗み見した横顔。


……そう、だったんだ。



脳裏に浮かぶ、日々の情景。

追いかける後姿。見失ったと思ったのに、ちゃんと見えるところにいて。

はぐれたと思ったのに、いつの間にかまた少し離れた場所に、何をするでもなく佇んでいたりして。



「(ほんとに、待っててくれたんだ……)」



コンビニのガラスに張り付いていた新庄くんと目が合ったのは、見間違いなんかじゃなくて。

変な男性に絡まれたとき、助けに来てくれたのも偶然なんかじゃなくて。



いつも、あたしのことを気にして、見てくれていたからなんだ。