「柏木さん」



電柱の前に立って、その名前を呼ぶ。

少しの間があって。

そぉっと顔だけをのぞかせた彼女は、恥ずかしそうな申し訳なさそうに目を伏せていた。



「あ、あの、あたし……っ、」

「……」

「ご、ごめんなさいっ、実は、ずっと前から、こんなあとをつけるようなっ、」

「うん」

「ストーカー行為を……っ」

「ずっと、知ってたよ」

「……ごめ、っえ?!」

「知ってて、……待ってたんだ」



電柱に肘をついて、その下に彼女を閉じ込めた。

俺の胸元に触れそうなほど間近から、見上げてくる彼女のまっすぐな眼差し。大きく見開かれ揺らめく瞳。


……もう、待つのはやめる。


誰のものにもなってほしくない。


そのほんのり染まった頬も、きれいな髪も、甘すぎない爽やかな香りも、小ぶりで可愛らしい唇も。

……誰にも触れさせたくない。


ちょっぴりぬけているところも、違う方向に頑張ってしまうところも、なのに土壇場ではめちゃくちゃかっこいいところも。

……俺だけが知っていたい。


きみの全てを俺が独占したい。


友達なんて、体のいい逃げ場所は、もういらない。


    ―――――「……柏木希羽さん」