純色ロマンティック

え、いつの間に……?


手の中に戻してくれたお財布を見て、きゅっと喉の奥が詰まった。



「ん、これ、柏木さんのでしょ」

「はい。」


「(ちがう!ありがとうって笑顔で伝えたいのに、)」


「……あ、ごめん。あいつに触るなって言ったくせに、俺が柏木さんに触っちゃってて……」

「はい。」


「(本当は、いいの!全然、大丈夫!助けてくれてありがとう!って言いたくって、)」


「……あー、何か買おうと思ってた?」

「いいえ。」
 
 
「(っ、し、新庄くんがおいしいって言っていた肉まん、あたしも食べてみたいなって思って)」


「そう?」

「はい。」



「(あたしのばか!そうじゃなくて、そうじゃなくって……!)」



「……」

「……」

「……」

「……」



思い描いている言葉は全然表に出てきてはくれなくて、いつものようにすんっと表情を消すしかできない。

会話も続かない。


これは間違いなくあたしのせいだ。新庄くんはいつだって楽しそうに友達とわいわいしている人なのに。

相手があたしだから。

新庄くんもきっと困ってる。


「(あたしは、結局ストーカーでしかないんだから……)」


そうだ。

あたしはストーカーの世界へ戻ろう。


言葉にはうまくできないけれど、せめて感謝の気持ちをお辞儀に込めようと、深く頭を下げようとした時。


落そうとした視線を先回りするように、新庄くんが身体を屈めてあたしを覗き込んだ。



「怖かったよね」

「……っ」

「……あいつ、……次会ったらコロス」

「?!」



いま、ものすごく物騒な言葉が……?

驚いて目を見開いたあたしを見て、新庄くんがくすっと笑った。



「……そういう柏木さん知ってるの、俺だけがいいな」



そういう、とは……?

きょとんと首を傾げたあたしをみて、さらに新庄くんは笑みを深くする。



「家まで送るよ」

「(家まで……、え?)」

「一緒に帰ろ」

「(へっ?! い、いい、一緒に?! か、かか、かえ……!)」

「やっぱ、近くにいないと俺の心臓がもたないし……」

「……?」

「まぁ、近くにいても、……もたないんだけどさ」



なぜか新庄くんの頬が少しだけ赤らんでいるように見える。

ストーカー歴8か月で、初めてみる新庄くんだ。