純色ロマンティック

……はっ!

だめだめ、浸っている場合じゃない。あたしのストーカー活動はまだ終わりではないのだ。

新庄くんがお家に帰るまで、見守る。とっておきの技を見逃すようなことがあってはならないから。


でも、その前に。

お店に入ったからには、なにか買ってから出ないと失礼だから。



「(あたしも、肉まんにしようかな)」



新庄くんがセブンの肉まんはおいしいって言ってたし。

あたしも食べてみようかな。

本当は、誰かと……できれば新庄くんと一緒に食べてみたいけれど、今のあたしには贅沢すぎる願望だ。

でも、いつか成し遂げたい野望として、今年の初詣で仏さまに願ってみよう。



レジで注文して、ICカードをかざすと「ピー」という残高不足を知らせるエラー音。



「あ、すみません、現金で払います」



鞄からお財布を取り出すと、手元からころんっと転がって落ちてしまった。拾おうと手を伸ばすと、なぜかその前にひょいっとあたしのお財布が宙に浮く。

驚いて見上げれば、あたしのお財布を手にした、まったく見知らぬ人がにっこりと笑っている。


誰……? 頭の中にたくさんの疑問符が浮かんだあたしに、その人は人懐っこい笑顔を向けた。



「やっぱりー!めっちゃ可愛いじゃん!」

「あの……?」

「一緒に遊びに行こうよ!」

「へ、あの、お財布を……」

「ああ、これね。一緒に遊んでくれたら返してあげる」

「いえ、あの、」

「いいじゃん! 少しだけ、お茶しようよー」



一緒に、遊ぶ……? お茶……?

話しかけてくれた人ではあるけれど、さすがにこれはちょっと違うとわかる。



「いえ、お財布を返して、く、くだしゃ、」

「うわー、噛んでる!」

「っ、」

「でも、それも可愛いから問題なし!」



揶揄われて、ぞわりと悪寒が走った。


どうしよう、このまま逃げようにも、あたしのお財布が。

それに、こうしている間にも新庄くんを見失てってしまうのに。



「じゃぁ、肉まんはキャンセルでー。ほら、行くよー」



気持ちの悪い声につかまって、身体が固まる。足が震える。呼吸が浅くなる。



「やめっ、」



腕を掴まれそうになったその時。



「やめろよ」



肩に、熱を感じた。


身体がなにかとてもあたたかいものに包まれて。

頬に感じたことのない鼓動が伝わってきて。



「彼女に触んな」



肩を抱き込んでいる腕に、きゅっと力がこもる。

その途端、あたしの心臓も破裂しそうなくらい走り回り始めた。


だって、この声は……。

まさか……。


おそるおそる見上げると、あたしのストーカー対象人物、新庄くんがいた。