バカは自分もか。聴力を失うだけで優武が愛想を尽かすはずないなんて少し考えればわかるはずなのに。

優武と腕を組みながら思い切り笑ったら張り裂けそうな悲痛はどこかに吹き飛んでいってしまった。優武に出会えた事が信愛にとって一番の幸運だ。それなら難聴も悪い事ばかりじゃない。だってこの病を抱えていなければ、きっと優武とは出会えなかったのだから。

「信愛さん、お手を拝借」

「は、はい……!」

 緊張に震える信愛の手を優しく包み込む優武。

「気に入ってもらえるといいんですけど……」

 優武も笑ってしまうくらい緊張していた。優武は手間取りながらも信愛の左薬指にエンゲージリングをそっとはめる。サイズもぴったり。真ん中にダイヤ、左右に小さなピンクダイヤ。花びらを彷彿とさせる細やかな装飾が高級感溢れる屈折した輝きを放つ。あまりの歓喜と興奮に心臓が踊りだす。どうしよう、今絶対鼻息荒い。

「すごくきれい、うれしい、死ぬ……」

「死んでもらっては困るんですけど、本当ですか……?」

「本当も何も、こんなすごい指輪もらって嬉しくないわけないよ!」

「よしっ! よかったです……!」